能登の未来

FUTURE

能登の祭りと郷土芸能

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投稿者

坂口政昭

奥能登輪島市。ここには後世に語り受け継いでいかなければならない数えきれないほどの文化や伝統芸能があります。
この地に生まれ育ち61年を過ぎました。
震災後、あまりに沢山のものを失った無念さと悲しみが一気にこの身に覆い被さってきました。
しかし、そんな中で思ったことが有ります。
自分も含めこれまで生きてきた人一人一人の心の中に、文化や伝統芸能は生きているんと言う事。
そしてその想いは無意識に体に染み込んでいるのです。
追儺祭(節分祭)あまめはぎ、輪島市の奇祭とも言うべき如月祭、春を告げる曳山祭、夏からは能登半島を代表するキリコ祭り、輪島市指定民俗文化財の「三夜踊り」、祝いの席には必ず歌い継がれてきた「輪島まだら」や「伊勢音頭」、それぞれの文化や祭には云われや風習があり、人々はその中で生きてきました。
正月明け、輪島市ではその年、40歳を迎える青年達でお当組と言う組織が作られます。
自分も経験した重蔵神社お当組は「神事」「総務」「装飾」「運行」「直会(なおらい)」「企画」と言う部署が協力してその年一年間、あらゆる祭事に携わっていきます。
年明け早々のお当組事務所開きが済むと輪島まだらや伊勢音頭の練習も行われ祭事にはその成果のお披露目が有ります。
祭り事の意味、成人としての振る舞い、神社との関係を深めていきます。
冠婚葬祭時、このお当組が様々な場面で協力をします。
お当組にとって一番の大役行事と言っても良いのが春祭りの曳山祭です。
鳳至町のお当組は住吉神社、河井町のお当組は重蔵神社の山車の世話をするためにあらかじめ編成された各部ごと一致団結して祭りの寄付集めや準備、運行全てを取り仕切っていきます。
自分は、山囃子保存会に席を置き重蔵神社曳山祭で曳かれる山車に乗り横笛を演奏しています。他に、三味線と太鼓を担当する囃子方が居ます。
また山車を動かす為の技術を持った「山方さん」と言うグループも祭には欠かせず、この方達と調整役、食事の準備などもお当組が担います。
これを始めとし、輪島の文化継承にはそこに住む人の郷土愛によって守られ語り継がれてきたと言えます。
高齢化と過疎化に加え今回の震災で更なる難題が襲ってきましたが、きっと脈々と受け継がれた輪島の人間の強さと優しさがあれば輪島の文化、伝統、郷土芸能を無くしてしまうことは決して無いと自分は信じています。

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