能登の未来
FUTURE
「寒さで人が死による」ことが無い場所となる
投稿者
兼田康彦
水蒸気改質と言われる1930年代に開発された技術がある。この技術は化石燃料から水素を製造する為のものであるが、草木類を原料にする事も出来る。100年後の奥能登では、この水蒸気改質の最先端を行って「奥能登型」として確立していている。この技術を使った日本の風土に最適化したCHP(熱電供給装置)を自前で開発、製作出来るセンター的な集落を持つ。各地の集落はこの技術を使ったCHPを備える。そこでは製材後の木片、耕作放棄地に自生するススキ、雑草、籾殻等身近で未利用資源を電気、疑似天然ガス、木質ペレット等、集落に必要なエネルギー全てを賄っている。
また、発生した熱は集落内の空調の熱源、取れた農水産物の加工、製塩の釜焚、酒の蒸留、農業ハウスの加温等に余すことなく使わる。
また、このエネルギーのインフラの中で大きく稼げないが、新世代の里山の基盤として働く人達が自分の仕事の意義を誇れる。エネルギーを需給する人達もお金が地域から出て行かない良いお金の使い方と納得し、奥能登でとれたものを自分達の口に入らない位過剰に出荷しなくても豊かに暮らせる。技術や暮らし方に賛同する人が集落に加わり、集落の人が他地域に技術や生き方を伝えるためおもむく。
以上のような未来が来ることを願っている。
以下からは少し自分のことを書くので書き方はですます調に変えます。
自分は2018年輪島でバイオマス発電所の運転員になるため帰って来ましたが、バイオマス発電所は大きければ大きいほど環境に良くない事がわかりました。珠洲で別の仕事に就き能登に来る他地域の人たちと程よく関わって身の丈に合わせて年を経てゆくのかと思いました。ですが、この震災で「寒さで人が死による」環境を体験しました。電気が無い、水も無い、心も体もすり減ってゆく。もう体験したくありませんが、いずれ来る時もあるでしょう。今各地では小型のCHPを使った事業の芽が出始めています。総務省も分散型電源は推進しているように見えます。例えば、珠洲市野々江に設置し、周辺の公共施設のひとつに熱と電気の供給、近くの公衆浴場に熱供給、又は熱を生かして平釜での製塩、もしくは酒の蒸留、木からのエッセンシャルオイル抽出などを行いランニングコストを回収する。又は外浦で他の地域から孤立した場所に設置し、平時はそこの公共施設や事業者に熱と電気を供給し、災害時においては避難施設に熱と電気を届ける。少し考えても色々な使い方が見えて来ます。また、行政で手が足りないのでしたら、設備運用は自分も含めて協力出来る人間は出てくると思います。
最後にタイトルの「寒さでひとが死による」は東日本大震災で木質ペレットとペレットストーブを持って岩手県住田町に向かったさいかい産業(現ウォームアーツ)の開発隊長古川正司氏の聞いた現地からの声です。
追記、この原稿を提出矢先の3月13日に自宅納屋ににおいて会社の同僚の澤田忠さんが亡くなっていることを知りました。死因は聞かされてはおりませんが、寒さが一因だとしたらいたたまれない思いです。この様に亡くなる方が今後出ない事を切に願います。