能登の未来
FUTURE
投稿者
古本宗充
能登半島は,その地質・風土とそれに根ざした豊かな文化・社会を持ち、震災以前でもジオパークとして十分意味がある地域だったと考えられる。今回の地震は、能登の地質・風土や生活がどのように成り立ち、どのように災害と結びついているかを改めて教えてくれるものとなった。よって今回の地震に関係する諸現象も含めて、従来型の能登半島のジオパークでも大きな意味がある。しかし、それ以上に激烈な自然災害からの「復興」を主題に据えたジオパークになれば、その意味は大きいと考える。
今後我々は何十年にも渡って、能登の社会や生活環境を復興しなければならない。ハード面として、市街地・集落およびそのインフラの再建築はもちろん、被災した構造物や景観の震災遺構としての保存、そして隆起した海岸などの天然記念物化なども行われるであろう。またソフト面としては、生業の再生や祭りなど伝統的生活や風習の伝承にも努力が払われるであろう。できれば、単に元に戻す復旧ではなく、風土に根ざして伝統を受け継ぎながら新たな能登の形成につながるものであってほしい。
これら長期にわたる多様な努力を続ける復興プロセスそのものに、学び参加するジオパークとなっていたら良いと考える。復興はともすれば地元能登や石川県の課題、広くても日本の国内課題として論じられやすいであろうが、こうした大災害からの復興という課題を世界に発信し共に考えてもらうことの人類的意味も大きいと考える。
能登の住人だけでなく訪れてくれる多くの人にも、能登の価値を再確認・再発見してもらい、復興をする意味を理解してもらうことにつながる。そしてその中で新たなアイデアや工夫も生まれであろう。また、日本・世界各地からの人々の訪問と理解や支援が能登の長期にわたる復興への動機の一つとなると考える。
なお、既に登録がなされている世界農業遺産「里山里海」とユネスコ無形文化遺産「来訪神(あまめはぎ)」と協働することで、より一層の能登の復興や発展に繋げることができると良い。