能登の未来

FUTURE

日本の未来を担う能登の新しい医療福祉保健

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投稿者

佐野仁紀

 私は今後の能登の医療を中心に、復興について考えている。令和6年能登半島地震の被害をうけた能登半島が100年後に、日本の医療の最先端となるモデルタウンであってほしいと願う。古い町並みにこれだけ大きな被害があり、完全に元通りになることはなく、何かしら新しい形で町が再建されると私は思っている。その新しい形の中で、日本で最先端の医療体制を提供したい。
 最先端の医療というと、大学病院等で最先端の技術を持って難病治療をするというようなイメージがあるかもしれない。それももちろん最先端の医療だが、私がここで言う最先端の医療とは、少子高齢化が進む将来の日本において、高齢者ひとり一人の生活に適した形で安全な医療を提供できるようなシステムのことを言う。少子高齢化が顕著な能登は将来の日本のモデルとも言える。
 私は高校生まで珠洲市で過ごし、よく珠洲市総合病院や地域のクリニックに通っていた。18歳まではそこで提供される医療に何の疑問も感じなかったが、大学に進学し薬学を学ぶ中で、医療体制や現代社会における医療問題についても学んだ。そしてそれは大学5年生になってから実務実習を通して現場でも感じることがあった。
 さらに最近のことで言えば、2024年2月26日から2024年3月1日に珠洲市総合病院で薬学実務実習を行った。震災後で普段とは違った病院を経験したが、珠洲市の人口がかなり減少しており、患者、医療者共に減った数十年後のような気分を味わった。病院のシステム自体は昔とあまり変わらないような気がしたし、金沢の病院や薬局で経験した実務実習と比べると、珠洲市の薬剤師業務において足りないことが多々あると感じた。
 珠洲市だけでなく、能登の各地域、特に奥能登では薬剤師不足が顕著で、定年退職できずに働いている薬剤師もいる。他の医療、介護等の各職種でも同様のことが言えるかもしれない。これは震災前からも問題視されていたが、震災でそれが加速したのは間違いない。震災を機に、医療も新しい形で再建しなければならないと強く感じた。
 今私が思うのは、能登の医療・福祉・保健の連携と、それらの機能を併せ持つ施設の必要性である。医療、福祉、保健は、言葉は違うが密接に関わっている。例えば、保健所で健康診断を受け、問題があれば病院で医療を受け、退院後は高齢者施設へ入居し健康管理をするといった流れがある。高齢化社会では特にこれらの機能が充実する必要があるが、震災後の能登の現状はこれが破綻している。実習中に、珠洲市では介護施設がほとんど機能していないことも知ったし、元通りになる可能性は低いと感じた。医療従事者、介護職員の数も限られる今後、医療・福祉・保健の機能を併せ持つ施設を新設し、地域住民ひとり一人に適した安全な医療を提供していきたい。そして100年後に日本が目指すべき医療体制の先駆けとなる町であってほしい。

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