能登の未来
FUTURE
能登は小さくても輝く東洋のエストニアに
投稿者
二角貴博
能登が復興した際には、人口が少なくなっても輝く地域になってほしい。地域の賑わいは人口だけではなく、ファンの多さによっても実現する。
北欧にエストニアという国がある。人口は約133万人の小国だが、デジタル先進国として名をとどろかせている。エストニアがリアルな産業よりインターネットの仮想空間で有名になったのは、国の成り立ちと深い関係があるそうだ。国土の東側をロシアと接し、たびたび併合されてきた。当時のソ連から独立したのは1991年だから、つい最近のことと言える。
ヨーロッパの国々は大きな戦争を何度も経験しており、国の成り立ちや独立について関心が高い。将来ロシアに併合されても、デジタルの世界なら生き残っていける。安全弁と同時に、国家としてデジタル化を目指したのである。デジタルの世界では、世界中の人々がエストニア市民になることも可能だ。
一方、能登はどうだろう。
大都市から離れた半島の北部に位置し、もともと人口は多くない。農林水産業が主産業で、自然豊かな土地柄だ。高齢化が著しく高い地区も多く、人口減少は避けられない。日本全体で大都市以外の人口減少が進んでいるが、2024年の能登半島地震により当地ではさらに拍車がかかるだろう。冬にはたびたび水道管が凍結して断水する地域だが、続くのはせいぜい一週間程度。今回の地震で3ヶ月経っても断水が続く地域があるようでは、生活を再建するため人口流出すのもやむを得ない。能登以外で生活の基盤を築いてしまえば、帰ってくるのも難しい場合もあるだろう。
近年地方自治体が打ち出す施策は、人口減少に歯止めをかけるよりも交流人口を増やす方にシフトしていることも多い。人口は減っても地域のファンを作りつながり続けることに関心が移っている。
能登は地震により、想定以上に人口減少が進むだろうが、悪いことばかりではないと思う。発災直後に通行できる道路が一路線に限られる状況でも、全国の人たちが能登に駆けつけようとした。国県などが行う呼びかけにより大勢の一般ボランティアが来ることは叶わなかったが、潜在能力の高さを感じた。今後は仮復旧ながら道路事情が改善したので、往来する人が増えるだろう。また、実際に現地へ来なくても、ネットでできる支援も広がっている。ネット募金や都市部で能登の特産品を買って応援する動きなどあまた。能登を気にかけファンになってくれる人を大切にしなければならないと思う。被災地が忘れられないように、常に情報発信を続けてくれる有志も多い。
たとえ能登に住む人が減っても、思いを馳せてくれる人たちがいる限り、能登はなくならない。リアルな人口数よりも仮想を含めた交流。復興した暁には、時々現地を訪れて自然や文化を味わってもらいたい。能登は東洋のエストニアを目指すべきだと考える。