能登の未来

FUTURE

能登乃國百年之計

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投稿者

中根正道

■能登の酒「能州」を復活させたい
 私は能登町で生まれ育ちました。愛知県の大学を卒業後、損害保険業に約20年携わり、現在は能登で農業をしながら、愛知との二拠点生活を送っています。担い手がいなくなった田んぼを自分がやるようになったのは2020年。ご近所の方にご指導いただきながら、何とか5期目を迎えました。
 私の実家は、造り酒屋の跡地にあります。私が赤ちゃんの頃、父は更地になったその土地を買って、家を建てました。造り酒屋で使用していた井戸を父が掘り直し、私はその井戸水を飲んで育ちました。いつか、この水で、昔の能登の銘柄のお酒をつくれたらいいなーーそんな思いがずっとありました。
 能登半島地震からの復興にあたり、酒米作りを勧められ、まずはやってみようと、今年初めてチャレンジすることにしました。思いがけないタイミングで、思っていたことが実現に向け動き出したかたちです。加藤酒造の「能州」を復活させたいと思っています。
 田んぼの前には、神社があります。そこの鳥居も狛犬も、元旦の地震で壊れてしまいました。神社の前の田んぼを荒れたままにするわけにはいかない。この田んぼで作ったお米でお酒をつくり、来年はそのお酒を神社に奉納したいと思っています。
 今回の地震で被災し、多くの方からさまざまなご支援をいただきました。お世話になった方々に、出来上がったお酒を持って挨拶に行きたい。そして能登の未来を語りながら、みんなでお酒を飲みたい――それが今の私の思いです。

■「エネルギーと水と食」地域で自主的に管理する復興計画へ
 私が描く、能登全体の復興のビジョンについてもお話させてください。
 能登半島の中核は和倉温泉がある七尾市。ぜひ七尾城を直してほしい。古城を繋ぐ旅のルートを掲げることで、インバウンド客を呼び込みたい。
 港湾や河川の復興工事は、機能を果たしながら自然豊かな風景を残すヨーロッパの近自然工法を取り入れたい。
 珠洲市は、地権者と商業者が分かれている特異な土地です。商業者に入ってもらい、綺麗なまちを作りたい。飯田からは昔、佐渡島に向かう海路がありました。今後、「空飛ぶ車」が実用化されれば、佐渡島に渡ることが可能になる。飯田を港町にして、能登半島に来た観光客が「空飛ぶ車」で上越に行けるドライブコースを作るのはどうでしょうか。
 私は、復興には「エネルギー」「水」「食」が大切だと思っています。自然エネルギー大国で知られるアイスランドをモデルに、和倉温泉の地熱を活かした復興計画を進めたい。能登には美味しい食があり、温泉がある。輪島塗など素晴らしい産業がある。立山、白山の水源が地下で繋がっていて、水も誇れる。美しい風景を含め、特異性のある地域です。震災から復興し、世界農業遺産に認定された美しい「能登の里山里海」を守り、インバウンド客を呼び込むことで活性化させ、未来へと繋げていく――そんな能登乃國を100年後に残したいと思います。


※動画は、2017年の奥能登国際芸術祭のときに作りました。私は愛知県で子どもたちに剣道を教えています。教え子たちが能登に遊びに来てくれたとき、能登のお膳でご飯を食べてもらい、地元の先輩方と合同稽古を行いました。「武道ツーリズム」の実践といえます。この動画では、私の母、妹、姪っ子――女性3世代が手を振る場面があります。何世代もの家族が安心して生活できる地域にならないといけない。そのメッセージも込めています。

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