能登の未来
FUTURE
投稿者
鳥井芳一
奥能登を自由な学びの場にできないか。
誰にとっても開かれた自由な学びの場として、奥能登は無限の可能性を秘めている。様々な枠組みがスクラップされた今から、「新しい学びの場」を創っていきたい。
私は、奥能登で中学校教員になって27年になる。教育には、学校現場から教育委員会まで、様々な立場の人々が関わっている。しかし、不足しがちな対話やコミュニケーション、意思決定に個々の教職員の意見が反映されにくい仕組み、謂わば「自由」のない職場という現実がそこにはある。そして、今回の地震は、このような教育現場のひずみを顕在化させた。その振れ幅は大きく、安全が確保されないまま、学校再開をせかされたところもあり、トップダウンに追われていたと多くの教職員がふり返っている。
一方、子どもたちは、どこか内なる規制にとらわれ「どうせ、だめだろうな」が思考に先回りをして、新しい一歩を踏み出すことができずにいるのでないだろうか。自分の意見をもち、「自由」な発想で考えることができる子どもは多くないと感じる。
今回の震災からの復興は、奥能登の次の100年の教育を作っていくチャンスととらえることができる。三方を海に囲まれ、里山が広がる能登半島の自然環境は、住む人に安心感を与え、かけがえのない文化を育んできた。子どもたちが落ち着いて集中することのできる環境は、感性や美意識を磨く上で最適な場になる。
私は、この奥能登の恵まれた環境を活かして、「特区」としての新たな教育の場を創ることを提案したい。
「自由」と「対話」をコンセプトに、奥能登全体が一つの単位制の学校として、教職員も一つのチームになり、地域住民も参加して、奥能登の内外から子どもたちを受け入れる。ICTを活用すれば、奥能登にいても世界とつながり、逆にどこにいても奥能登の教育を受けることができるので、世界中の子どもも大人も参加できるカリキュラムやオンライン授業等の仕組みを構築することができる。教職員チームは、教育のビジョンや価値観を共有し、フラットな関係のもと密な対話でつながっている。組織の意思決定の際は、必要なブレインストーミングを行い、意見集約を行うプロセスを大切にする。児童・生徒は自分のスタイルで自由に学びたいことを学びつつ、必要な単位を修得する。教職員も自分のライフスタイルに合わせて自由な形態で働くことができる。また、奥能登には「のと里山空港」があるが、教育の観点からも重要な交通インフラとして、関係者をつなぐ役割を期待できよう。
奥能登が、今回の地震から力強く復興し、誰にとっても自由な「学びの場」になれば、能登や日本だけでなく、世界の発展にも貢献することができるはずだ。奥能登が、次の100年を担う子どもたちを育むための「自由な学び」の特区として復興する未来をめざして、出来ることからコツコツと粘り強く取り組んでいきたいと思う。