能登の未来
FUTURE
投稿者
大谷まどか
➀能登と海
私は、能登の海が大好きです。能登島でダイビングに出会い、自然の持つ美しさ、怖さ、豊かさを学びました。海で過ごす時間は、陸の上で、社会で握りしめてしまったストレスや思い込みを開放してくれました。一方で、しっかりと学び、装備をして、海の中にお邪魔させてもらうという、潜るまでのプロセスには、自然を相手にすることを軽視せず、命を守るための心構えもしっかりと身に着けることの大切さも教えていただきました。
多様な生命を感じ、海草の森からは酸素が生まれ、見上げれば太陽の光がキラキラと輝く。南国の海とは違う、生きる原点のような学びが詰まった能登の海なのです。
そういった自然との共生を教えてくれる能登唯一のダイビングショップは、レジャーの要素だけではなく、海の生態系の観察や保護、漁業者を支える水中作業、海での事故に備えてスキルを磨く潜水士の育成など、様々な側面から能登の海を支えています。しかし、業種別の公的な支援では対象にならず、支援がないと聞きました。
地震や津波が起きやすい地域であることは、今後も変わらないとしたら、海と付き合っていく地域として、図面だけを見て海を恐れ切り離すような未来づくりではなく、海とともに築いてきた産業を支える人にも、力を発揮できるサポートが必要だと考えます。
②能登と陸
地理的な問題で、地上の交通網を整備してもどうしても移動距離がかかるのは仕方のないことです。金沢からでも、県外のような距離を感じます。災害時も想定したレベルで通信環境を整えて、日ごろからオンラインでのコミュニケーションがとりやすくなることで、授業、医療、情報における孤立に対策し、距離をカバーできる「遠くても近い能登」が実現したらいいなと思います。
日々の暮らしをとっても、人々が集中しすぎている場所が私は苦手です。現代では時間、場所にとらわれる働き方が多いことが影響し、過密な中で受けているストレスが慢性的になっているのではないでしょうか。人間の本質としては、効率よくこなすことではなく、感じることや味わうというものも大切だと考えます。
能登の外に暮らす人にとっては、能登にはそういった五感を刺激する雰囲気があります。どちらがいいということではなく、日本人が息抜きをできる旅先、セカンドライフ、2拠点暮らしなど、過密な日常とは違う時間を過ごせる場所として、愛される地域なのではないでしょうか。
しかし、それも能登の中に暮らす人の営みがあってこそ。能登で暮らす人のことは、能登の人の声に耳を傾けるところから丁寧に聞き出していくことが大切です。何ができるか、どの道を選ぶか、決めがたい決断の連続ではありますが、地域の主役は現地に暮らす人だと私は考えます。現地の人を置き去りにせずに、心をつなぎ丁寧に対話を重ね、選んだ道を共に正解にしていく努力を中からも外からもしながら、未来が描かれていくことを望みます。